現在、さまざまなビジネスシーンでリーダーシップの発揮が求められています。今回は、そんなリーダーシップの種類について解説します。
現在のビジネスシーンでキャリア形成を行っていくうえで、さまざまな局面でリーダーシップを発揮していかなければなりません。しかし、ビジネスの文脈で用いられるリーダーシップには多様な定義・種類があり、それぞれ求められる役割や機能が異なります。
こういったリーダーシップの種類を理解することは、自身の強みと弱点を認識し、それらを効果的に活用するためには不可欠です。例えば、ビジョン型やコーチ型、関係重視型などのリーダーシップスタイルを適切に理解し適用することで、自分自身のリーダーシップ能力を高め、チームの成果を最大化できます。
今回は、そんなリーダーシップの種類について解説します。自己のキャリア成長だけでなく、組織全体の成功にとっても重要な要素となりますので、お役立てください。
リーダーシップの定義とは
リーダーシップとは、組織内で目標を設定し、メンバーを導きチームとして成果を出す能力のことです。日本語では「指導力」や「統率力」とも表現されます。
「周囲を引っ張っていける人」というイメージから、リーダーシップが先天的な要因で決まると考えられがちですが、現代ではトレーニングによって後天的に身につけるスキルと考えるのが一般的です。
加えて、リーダーシップには、さまざまな形が存在します。これは、リーダーが置かれている状況、組織の文化、メンバーの特性などによって異なります。例えば、革新的なアイデアや変革を推進するリーダーシップ、人々を励ますことに重点を置く支援的なリーダーシップ、厳格なルールに基づく権威的なリーダーシップなどがあります。
さらに、リーダーシップは個人だけでなく、組織全体にも影響を与える点も特徴です。リーダーの行動や姿勢は、組織の文化や価値観を形作り、メンバーのモチベーションやパフォーマンスに直接的な影響を及ぼします。そのため、リーダーは自己の行動を常に意識し、組織の目標とメンバーのニーズの両方に対して責任を持つことが求められるのです。
PM理論によるリーダーシップの分類
PM理論は、日本の心理学者である三隅二不二氏によって提唱されたリーダーシップの理論で、リーダーの行動を「パフォーマンス(P)」と「メンテナンス(M)」の2つの要素で評価します。
この理論では、これらの要素の強弱によってリーダーシップを4つのタイプに分類するのが特徴です。PとMの要素については、「強い/弱い」を「大文字/小文字」で表現します。
それぞれのタイプを詳しくみていきましょう。
PM型 |
● 目標達成と集団維持の両面で高い能力を持ち合わせている。 ● イノベーションの推進とチームの士気の維持が可能。 |
Pm型 |
● 目標達成に関しては優れているが、チームの結束やメンバーの満足度を保つのが苦手。 ● 短期的な成果は出せるが、長期的な組織の健全性やメンバーのモチベーション維持に課題あり。 ● 高い成果を目指すあまり、チームのバランスを崩すリスクがある。 |
pM型 |
● メンバー間のコミュニケーションや協力を促進することに長けている。 ● 組織の雰囲気は良好だが、具体的な成果の面で弱点がみられる。 ● メンバーの能力を最大限に引き出すことに挑戦する必要がある。 |
pm型 |
● 目標達成能力も集団維持能力も不足している。 ● メンバーの指導やチームの方向性を設定するのに苦労する。 ● 個々のメンバーの能力を活かしきれず、組織全体のパフォーマンスが低下する傾向がある。 |
PM理論を用いて自身のリーダーシップスタイルを客観的に評価することで、その強みと弱みを理解できます。一般的にPM型がバランスの取れた理想的なリーダーシップと考えられて言います。
例えば、目標達成には強いがチームの結束力に欠けるPm型のリーダーは、メンバーとのコミュニケーションやチームビルディングに注力することでバランスを改善できる可能性が高まります。
自身のリーダーシップスタイルとチームのニーズを照らし合わせ、何が優れ、何が不足しているのかを理解し、より効果的なチーム運営を目指しましょう。
代表的な6種類のリーダーシップ
ビジネスシーンで用いられる代表的なリーダーシップとして、以下の6つが挙げられます。
1. ビジョン型
2. コーチ型
3. 関係重視型
4. 民主型
5. 実力型
6. 強制型
次項より、それぞれ個別にみていきましょう。
1.ビジョン型
ビジョン型リーダーシップは、リーダーが強いビジョンを掲げ、それに向けてチーム全体を導くスタイルです。このリーダーシップはメンバーの自主性を重視し、組織の帰属意識を高めることに効果的といえます。特に変革や成長が求められる状況で真価を発揮します。
2.コーチ型
コーチ型リーダーシップは、メンバー一人ひとりと密接な関係を築き、個々の能力や目標達成をサポートするスタイルです。このタイプはメンバーの自律性を促し、高いモチベーションを維持する助けとなる点が特徴といえます。
一方で、リーダーには高いコーチング能力とメンバーのサポートに時間を要することがデメリットとして挙げられます。
3.関係重視型
関係重視型リーダーシップは、メンバー間の関係性や感情に配慮し、チーム内の信頼関係を築くことに重点を置くスタイルです。このリーダーシップによってはチーム内の調和を促し、協力的な環境を作り出せます。
一方で、目標達成よりも人間関係の維持に重きを置く傾向があるため、他の型のリーダーシップもバランスよく取り入れることが重要です。
4.民主型
民主型リーダーシップは、メンバーからの意見を積極的に受け入れ、合意形成を通じて目標達成を目指すスタイルです。
このタイプはチーム全体の参加を促し、多様なアイデアの採用をしますが、意思決定のプロセスが長引く可能性もあり、ときには迅速な判断が求められます。
5.実力型
実力型リーダーシップは、リーダー自身が高い専門性や技能を持ち、それをもってチームを引っ張るスタイルです。このタイプのリーダーは、自らの実力と成果でチームメンバーの信頼を得て、模範となる存在として振る舞います。
6.強制型
強制型リーダーシップは、トップダウン型で強い指示や命令を出すスタイルです。緊急事態や危機的状況で迅速な行動が求められる場合に有効ですが、長期的にはメンバーのモチベーション低下や離職率の増加を招くリスクもあります。
リーダーシップを発揮する上で必要なスキル
リーダーシップを発揮する上では、次のようなスキルが求められます。
● 行動力
● 目標設定能力
● 判断力
● コミュニケーション能力
それぞれ詳しく解説します。
行動力
行動力は、リーダーにとって必要不可欠なスキルです。リーダーは自らの行動をもってチームを導く必要があり、単に指示を出すだけではなく、実際に行動を起こして進む道を示すことが求められます。
組織のビジョンや目標を積極的に発信し続けることにより、メンバーのモチベーションを高められるでしょう。問題が発生した際には、臨機応変な対応が求められるため、迅速かつ効果的に対処する能力が重要です。
目標設定能力
目標設定能力は、リーダーが明確で実現可能なビジョンと目標を設定することが求められます。この能力はチームに方向性を与え、メンバーが目指すべき具体的な成果を明示することに役立ちます。
ビジョンや目標は非現実的なものではなく、実現可能でメンバーを動機付けるものでなければなりません。可能な限り目標を数値化し、可視化することで、チームメンバーが目標達成に向けて具体的なステップを踏んでいけるでしょう。
判断力
判断力は、リーダーが直面するさまざまな状況において、適切な意思決定を行う能力を意味します。想定外のトラブルに直面した際、臨機応変に対応し、正確な判断を下すことが大切です。
そのために、十分な情報収集とチームメンバーの意見やアイデアへの考慮も求められます。組織やメンバーに対する深い理解と責任感を持って、意思決定を行いましょう。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、メンバーとの効果的な関係構築において中心的な役割を果たします。メンバー一人ひとりの個性や強みを理解し、適切な方法でコミュニケーションを取ることで、チームのパフォーマンスを最大化できます。
ビジョンや目標をメンバーに伝える際には、明確で心に響く言葉を選び、メンバーからのフィードバックや意見に耳を傾けましょう。これにより、チーム内の信頼関係の構築とメンバーのモチベーション向上を実現できます。
まとめ
ビジョン型から強制型までの各リーダーシップスタイルは、それぞれ適した状況や組織で発揮することで、各プロジェクトや施策での成果創出に結びつきます。
リーダーシップを発揮し、効果的にチームを引っ張っていく上では、行動力や目標設定能力、判断力、コミュニケーション能力といったスキルも大切です。これらのスキルは状況に応じて柔軟に適用し、継続的に磨くことが求められます。
リーダーシップをより深く理解し、実践するためには、それぞれのリーダー像に求められる役割とスキルをしっかりと理解しましょう。