人材採用の方法にはさまざまな選択肢があるため、自社に合った手段を見つけることが大切です。「自社の業務内容や企業風土などをきちんと理解してくれる人材がほしい」「モチベーションの高い人材を求めている」という場合には、「紹介予定派遣」を利用してみるとよいでしょう。
今回は紹介予定派遣の仕組みについて、通常の派遣との違いを踏まえながら解説します。また、企業が紹介予定派遣を導入するメリットと注意点も併せて見ていきましょう。採用担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
紹介予定派遣とは
紹介予定派遣とは、派遣先の企業への職業紹介を前提とした労働者派遣のことです。派遣社員と派遣先企業の合意があれば、派遣期間終了後にそのまま直接雇用する仕組みで、通常の派遣に比べて正規雇用をイメージしやすい点が特徴といえるでしょう。
直接雇用には労使双方の合意形成が必要であり、企業側から雇用を断ることもできます。一方、労働環境や社内システムなどが合わないと感じれば、派遣社員側から断ることも可能です。
そうした点を踏まえると、紹介予定派遣には通常の人材採用における「試用期間」のような意味合いがあるといえるでしょう。企業側は採用コストを抑えながら、自社が求める人材を確保する手段として活用できます。
紹介予定派遣と派遣との違い
紹介予定派遣と通常の派遣は、どちらも派遣会社を通じて人材の募集や採用を行う点は同じであるものの、採用の前提条件や雇用期間の長さ、選考の仕組みなどに違いがあります。通常の派遣との違いはおもに以下の3つです。
- 契約期間終了後に直接雇用できる
- 派遣期間が短い
- 面接ができる
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
契約期間終了後に直接雇用できる
繰り返しになりますが、紹介予定派遣の重要な前提条件としては、契約期間終了後に直接雇用できる点が挙げられます。そのため、紹介予定派遣を導入する場合は、直接雇用を前提としていることを企業側が明示しなければなりません。
また、派遣社員側も直接雇用を前提としている点をきちんと認識し、同意したうえで応募する必要があります。なお、紹介予定派遣の場合は、派遣期間内であっても両者の合意があれば直接雇用に切り替えることができます。
通常の派遣においては、派遣期間中の派遣社員は派遣会社に所属している扱いであるため、雇用契約を結ぶことができません。この点も、通常の派遣と紹介予定派遣の大きな違いといえます。
人材の適性をよく見極めたうえで、能力の高い人材を雇える点は、紹介予定派遣の大きな特徴といえるでしょう。
派遣期間が短い
通常の派遣における契約期間は、原則最長3年間と法律で定められています。それに対して、紹介予定派遣の契約期間は最長6ヶ月間です。
紹介予定派遣はあくまでも試用期間という考え方であるため、通常よりも短く設定されているのです。また、派遣期間の終了後に直接雇用をせず、通常の派遣社員として業務を継続させることは、厚生労働省により禁じられています。
面接ができる
通常の派遣では、派遣先の企業が派遣希望者と事前面接を行うことはできません。労働者派遣法第26条6項で、「労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」と定められています。
これは、「派遣先の企業自身が派遣社員を選別する行為を避けなければならない」という意味を持っています。厳密に禁止されているわけではないものの、通常の派遣ではあくまでも「派遣会社側」が派遣先を決める仕組みとなっているため、採用前の面談や打ち合わせは行えないのです。
しかし、条文内で「紹介予定派遣を除く」とされているように、紹介予定派遣であれば事前に履歴書を確認したり、派遣希望者と面談をしたりすることが可能です。紹介予定派遣は直接雇用を前提としているため、採用する企業側に選定の機会が設けられているのも自然なことといえるでしょう。
紹介予定派遣のメリット
紹介予定派遣には、さまざまなメリットがありますが、企業側のおもなメリットは以下の通りです。
- 人材のミスマッチを回避できる
- 採用コストを削減できる
- 人材の取りこぼしを減らせる
ここでは、これら3つのメリットについて紹介します。
人材のミスマッチを回避できる
紹介予定派遣では、求職者との相性をあらかじめ確認できるため、採用検討のための材料を大幅に増やせます。また、直接雇用前に求職者に実際の業務を対応してもらうことで、適性判断にもなるでしょう。
直接雇用では人材のマッチングがうまくいかないこともありますが、紹介予定派遣では、そのようなリスクを軽減できます。求職者に実際の環境で業務を経験してもらうことで、チームメンバーとの相性や必要なスキルの有無などを見極められるのです。
このように紹介予定派遣では、人材のマッチング度を精査したうえで契約を行えるため、長く働いてもらいやすくなります。紹介予定派遣を上手に活用すれば、、採用活動の業務負担を減らすことにもつながるでしょう。
採用コストを削減できる
派遣会社を通じて採用活動を行うことは、採用コスト削減にもつながります。採用コストが軽減できれば、その分の予算をほかに回せるため、人事・労務管理に関する業務を円滑化できるでしょう。
通常の人材採用においては、採用の可否にかかわらず、求人に必要な広告費用や準備のための人的コストが発生します。
一方、紹介予定派遣の場合は、派遣期間を経て入社の合意が行われたときにはじめて人材紹介手数料が発生する「成功報酬型」を採用しています。そのため、自社が独自で採用活動を行うケースと比べて、求人広告費はもちろん、採用工程の人的コストや派遣期間中の労務管理コストといった見えないコストも抑えることができるのです。
年間の採用人数が多い企業ほど、採用にかかるコストの見直しを行うことで削減効果を実感しやすくなるでしょう。人材の適性を見極めながら、無駄な採用コストを削れるため、紹介予定派遣は企業側にとってメリットが大きいといえます。
人材の取りこぼしを減らせる
紹介予定派遣の仕組みを用いれば、通常の採用システムでは取りこぼしがちな未経験の人材にも直接アプローチできます。未経験ながらも意欲のある人材と接点を作れることは、紹介予定派遣ならではの大きな利点といえるでしょう。
採用計画は、現状不足している人材のみならず、将来的に必要となる人材も含め、中長期的な視点で考えていくことが大切です。国内においては少子高齢化の影響から労働人口は減少傾向にあるため、いかに人材を確保するかは経営戦略や事業戦略を考えるうえでも重要視すべき課題といえます。
たとえ未経験の人材であっても、自社での業務を通じて大きな力を発揮してくれる人材もいます。また、業務にやりがいを感じてもらえれば、長く仕事に取り組んでくれる可能性が高まるでしょう。
通常の採用システムと並行して、紹介予定派遣の仕組みも柔軟に取り入れていくことは、安定的な人材の確保につながるはずです。
紹介予定派遣の注意点
紹介予定派遣を導入する際には、いくつか理解しておくべきデメリットがあります。ここでは、以下3つのおもな注意点を見ていきましょう。
- 紹介手数料が発生する
- 候補者が辞退することがある
- 直接雇用後に離職されることがある
紹介手数料が発生する
紹介予定派遣では、通常の派遣費用に加えて紹介手数料が発生します。そのため、スムーズに直接採用を行う場合と比べると、コストが高くなってしまうケースもあります。
ただし、前述のように紹介手数料は成功報酬制のため、直接雇用を見送った場合には発生しません。また、一から自社で多様な人材を募集する場合と比べると、宣伝広告費などを削減できるため、結果としてコストを抑えられるでしょう。
候補者が辞退することがある
紹介予定派遣は求職者も派遣先企業も直接雇用を前提として利用するものです。しかし、紹介予定派遣だからといって、候補者が必ずしもオファーを承諾してくれるとは限りません。
条件が合わなかったり、働いてみたうえで社風やカルチャー・業務内容が合わなかったりなど、さまざまな理由で辞退されることもあることを事前に考慮しておきましょう。その場合は、新たに人材派遣会社に依頼し、人材を選びなおす手間が発生します。
直接雇用後に離職されることがある
紹介予定派遣では、派遣時と直接雇用時で労働条件を変えることも可能です。また、直接雇用といっても、必ずしも正社員として雇用するとは限らず、契約社員として採用するケースもあります。
紹介予定派遣として雇用形態を直接雇用に切り替えた後に、労働者が離職してしまう可能性はゼロではありません。紹介手数料が戻ってくるケースもありますが、離職するタイミングなどによっては戻らない場合もあります。
まとめ
紹介予定派遣とは、派遣期間後に派遣先の企業が直接雇用することを前提とした人材採用の方法です。求職者と企業の双方が正式な雇用を見据えて向き合うため、自社との相性がよい人材を見極めやすくなります。
ただし、直接雇用には企業と派遣社員との合意が必要で、必ずしも派遣期間終了後も自社で働いてもらえるとは限りません。紹介予定派遣では、派遣社員として採用する前に面談が行えるため、スタートの段階でじっくりと人材を見極めることが大切です。
さまざまなメリットがある紹介予定派遣ですが、長所と注意点の両面を理解しておく必要があります。そのうえで、自社の採用手段の選択肢の一つとして検討してみましょう。