契約社員と派遣社員の違いとは?基本的な特徴を解説

人材採用の選択肢にはさまざまな種類があります。多様な働き方が受け入れられる現在のビジネスシーンにおいて、非正規社員の採用を視野に入れることは、新たな人材確保だけでなく企業の成長にもつながるでしょう。

今回は契約社員と派遣社員について、それぞれの特徴や正社員との違い、人材活用におけるメリット・デメリットを解説します。

目次

契約社員と派遣社員の違い

契約社員と派遣社員は、どちらも雇用期間が決まっている従業員のことを指す言葉ですが、両者の意味は明確に異なります。ここではまず、それぞれの特徴を踏まえたうえで、具体的な違いを見ていきましょう。

契約社員とは

厚生労働省「さまざまな雇用形態」によると、契約社員(有期労働契約)は正社員と違って、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められています。労働者と使用者が合意によって定めた契約期間が満了すると、契約社員の労働契約は自動的に終了します。

それに対して、正社員は「期間を定めずに雇われている労働者」を指します。つまり、正社員と契約社員の違いは、あくまでも「雇用期間が決められているかどうか」にあるということです。

なお、契約社員の1回あたりの契約期間の上限は同一企業で3年(一定の場合を除く)とされており、引き続き雇うためには契約更新を行う必要があります。また、契約社員が同一の事業所で累積5年間の契約を行った場合、無期雇用契約(=正社員)への転換を求める権利が生じます。

派遣社員とは

厚生労働省の定義によると、派遣労働は「人材派遣会社に登録し、仕事の紹介を受け、企業に派遣されて就業する雇用形態」を指します。実際に勤務する現場は派遣先の企業となりますが、法律上の雇い主はあくまで派遣元の人材派遣会社である点が特徴です。

また派遣法では、「派遣社員は基本的に同じ派遣先の同じ部署で3年以上は働けない」とされており、これは「3年ルール」と呼ばれています。ただし3年ルールには一部例外もあり、次のようなケースでは期間の制限なく働くことができます。

  • 無期雇用派遣契約(派遣会社に無期雇用されているケース)の場合
  • 60歳以上の方
  • 有期のプロジェクトに携わっており、終了日が決まっている場合
  • 1か月の勤務日数が派遣先の通常の労働者の半分以下で月10日以下の場合
  • 産前産後、育児・介護などで休業している社員の代わりに派遣就業する場合

また、3年経過後も同じ部署で働いてもらいたい場合には、直接雇用契約を結ぶ必要があります。ただし、同じ事業所であっても部署が異なれば、再び派遣社員として受け入れることも可能です。

それぞれの違い

契約社員と派遣社員の違いについて、改めて整理してみましょう。

 

契約社員

派遣社員

雇用主

・就業先の企業

・人材派遣会社

給与形態

・月給制が基本

・時給制が多い

勤務時間

・一度の契約で最長3年(更新可能)※

・同一部署で最長3年(更新不可=直接雇用の必要あり)

福利厚生・有給休暇の取り扱い

・就業先の企業のものを適用

・派遣元の企業のものを適用

※同一企業での契約が累計5年間を超えると、契約社員側から無期雇用契約への転換を求める権利が発生する


まず、重要なポイントとして「雇用主の違い」が挙げられます。契約社員は就業先の企業が直接雇用するのに対し、派遣社員は人材派遣会社が雇用します。

そのため、派遣社員の給与は派遣会社から支払われ、福利厚生なども派遣元のルールに従います。一方、契約社員の給与は勤務先から直接支払われ、福利厚生などは就業先のルールが適用されます。

勤務期間については、前述の通り契約社員は一度の契約で最長3年とされていますが、契約の更新は可能です。また、同一企業内での累積契約期間が5年を超えると、労働者の側に無期雇用契約への変更を求める権利が発生します。

一方、派遣社員が同一部署で3年以上働く場合は企業側に直接雇用の義務が生じます。契約期間は特に混同されやすいポイントであるため、違いを正しく把握しておくことが大切です。

ほかの雇用形態との違い

契約社員派遣社員違い 07-02

契約社員と派遣社員について、そのほかの雇用形態との違いも確認しておきましょう。

正社員との違い

正社員の大きな特徴は、「無期雇用」という点にあります。契約社員と正社員の違いは定義から見ればこの1点のみであり、給与は就業先企業から直接支払われるなど、基本的な項目について両者に違いはありません。

一方、派遣社員と正社員は、雇用主や給与形態といったさまざまな違いがあります。

請負・委託との違い

請負は民法第632条に定義されている契約形態であり、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」とされています。請負の大きな特徴は、成果物によって仕事の完了が判断される点にあります。

そのため請負は、成果物が明確になりやすいWeb制作やセミナー講演などの依頼時に利用されることが多い契約形態といえます。また、完成までの工程や作業方法について、注文する側が一切指示を出せないのも大きな特徴です。

なお、委託とは民法上の「請負」「委任」「準委任」を総称する言葉であり、それぞれ以下のような特徴があります。派遣との違いも踏まえて、それぞれのポイントを理解しておきましょう。

    

 

派遣

委託

 

請負

委任

準委任

業務の目的

依頼された業務の範囲

仕事の完成

法律行為にあたる事務処理

法律行為以外の事務処理

報酬の対象

業務の遂行

成果物

業務の遂行

業務の遂行

指揮命令権

派遣先

受託側

受託側

受託側


派遣の場合、業務の具体的な指示は派遣先の企業が行いますが、請負の場合は仕事を受注した法人あるいは個人に指揮命令権があるため、仕事を依頼する側が指示を出すことはできません。

出向との違い

出向には、次の2つの形態があります。

  • 転籍出向:元の企業での身分を解消し、出向先の社員として勤務する形態
  • 在籍出向:出向元での身分を維持しつつ、出向先の社員として勤務する形態

転籍出向は、出向元企業との雇用関係がなくなるため、実質的には新たな企業に転職するのと同じ状態にあたります。

一方の在籍出向は、出向元と出向先の両方と雇用契約を結び、基本的な指揮命令や人事は出向先が行う出向形態です。在籍出向の前提としては、出向先で一定期間働いたあとは、出向元に戻ることになっています。
また出向元は、一部の人事権を除いて具体的な業務の指示は行えません。この点については、派遣社員と似ている側面もありますが、在籍出向では出向先企業とも雇用契約が結ばれている点が異なります。

契約社員のメリット・デメリット

契約社員派遣社員 07-03

契約社員のメリット・デメリットについて、雇用する側から見たポイントを解説します。

契約社員のメリット

契約社員は正社員と比べて期間に定めのある契約方式を用いるため、人材のミスマッチといった採用時のリスクや採用コストを抑えられるのが特徴です。また、就業先企業が直接雇用契約を結ぶため、派遣社員と比べると、正社員としての採用を見据えたやりとりが行える点もメリットといえます。

契約社員のデメリット

契約社員は契約期間に定めがあるため、期間を超えて雇用を継続する際は更新を行う必要があります。更新には両者の合意が必要となるため、せっかく育成しても契約を延長できないといったケースは十分に考えられるでしょう。

また、5年を超えて雇う場合には、社員に無期雇用を求める権利が発生するため、最終的には正社員としての雇用も視野に入れておく必要があります。

派遣社員のメリット・デメリット

契約社員派遣社員 07-04

続いて、雇用する側から見た派遣社員のメリット・デメリットについても見ていきましょう。

派遣社員のメリット

派遣社員を受け入れる大きなメリットは、人材確保のためのコストや事務作業を削減できる点です。人材派遣会社を通じて必要な人材を確保できるとともに、契約内容は個別に交渉する必要がなく、派遣会社とのやりとりのみに集約できるのが特徴です。

また、保険関連の手続きや労務に関する事務なども自社で担う必要はありません。
さらに、派遣社員であっても労使の合意があれば、いずれ正社員として雇い入れることもできるため、正社員採用を検討する機会として活用することも可能です。

派遣社員のデメリット

派遣社員を受け入れる場合には、直接の雇用主となるわけではないため、トラブルなどの処理は人材派遣会社を通じて行う必要があります。そのため、直接的に雇うケースと比べて、労務に関する問題解決には時間がかかってしまう点はデメリットといえるでしょう。

また、採用するためには人材派遣会社に支払う費用が発生し、業務に慣れてもらうまでの育成コストもかかります。丁寧に指導をしても、そのまま定着してもらえるとは限らないため、習得に時間がかかる業務を任せづらい面もあるでしょう。

契約社員と派遣社員の適性

契約社員派遣社員 07-05

契約社員と派遣社員には、それぞれ異なるメリットやデメリットがあるので、実情に合った選択肢を見極めることが重要です。ここでは、それぞれどのような人が向いているのかを解説します。

契約社員が向いているタイプ

契約社員が向いているのは、仕事に対して次のような考えを持っている人です。

  • レベルの高い業務を任されたい
  • スキルアップを図りたい
  • 将来的には正社員として働きたい

契約社員は正社員と同じような責任レベルで仕事を担うケースが多いです。雇用期間が限定されていることを除けば、正社員とほとんど同じ条件で勤務できるため、より高レベルな業務を任せてもらいたい人に適した働き方といえます。

また、仕事を通じてスキルアップを図りたいと考えている人や、将来的に正社員として雇われることを希望する人も、契約社員に向いているといえるでしょう。前述のように契約社員の場合は、契約期間が5年を超えると無期雇用契約を求められることもあるので、正社員採用を視野に入れたい場合も実現させやすいでしょう。

まとめ

契約社員と派遣社員は、どちらも期間を定めて契約する労働者を指す言葉ですが、両者の仕組みは大きく異なります。契約社員は自社で直接雇用するのに対し、派遣社員は派遣元が雇用主で、派遣会社を通じて人材を派遣してもらう仕組みです。

契約社員と派遣社員では労働条件や契約期間に関する取り扱いも異なるため、雇用者はきちんとそれぞれの違いをおさえておくことが重要です。
両者のメリットも把握したうえで、自社の実情に合った雇用形態を検討しましょう。