現代のビジネス環境は、予測困難で変化が激しくなっており、企業が持続的に成長するためには、戦略人事が重要です。本記事では、戦略人事の概要について詳しく解説し、戦略人事が現代企業においてなぜ重要なのかを紹介します。
現代のビジネス環境は、予測困難で変化が激しくなっています。このような状況下で企業が持続的に成長するためには、戦略人事が重要です。戦略人事は、人事業務の効率化だけでなく、経営戦略の実現に直接貢献する人材マネジメントの方法です。
戦略人事により経営ビジョンの深い理解、必要な人材の明確な定義、全社的なコミュニケーションの促進をすることで、自社の持続可能性をより高められるでしょう。本記事では、戦略人事の概要について詳しく解説し、戦略人事が現代企業においてなぜ重要なのかを説明します 。
戦略人事とは
戦略人事とは、経営戦略と人的資源マネジメントを統合し、競争優位性の強化を目指す人事施策の策定と実行を指します。具体的には、企業の競争優位性を実現するため、人材採用や人材育成など人的資源を最大限に活用することで、企業は市場での競争力を強化し、企業の戦略的強化を目指します。
2024年版】戦略人事が必要とされる背景
2024年現在は、「VUCA(Volatility Uncertainty Complexity Ambiguity) 」と呼ばれる予測困難な時代が訪れ、事業環境は急速に変化しています。変化に迅速に対応できるスキルや知識を持った人材の獲得と育成が、企業の持続的な成長には不可欠です。
戦略人事と人事戦略との違い
人事戦略は、主に人事業務の効率化や改革を目指すものです。一方、戦略人事はこれを一歩進め、経営戦略の実現を直接サポートし、ビジネスの成果に積極的に貢献することを目的としています。
人事戦略がインフラ人事や日常・ルーティン人事に関わるのに対し、戦略人事は経営戦略の構築に深く関与しつつ、全社的な視点から人材マネジメントを実施します。これにより、戦略人事は組織全体の戦略的な成長と変革を目指す重要な役割を担います。
戦略人事の4つの機能と役割
戦略人事に期待される機能・役割は、代表的なものとして以下の4つが挙げられます。
● 1.HRBP
● 2.OPs(オペレーションズ)
● 3.CoE(センターオブエクセレンス)
● 4.OD&TD(組織開発&タレント開発)
次項より、個別にみていきましょう。
1.HRBP
HRBP(Human Resource Business Partner )は、人事面から経営者や事業責任者と連携し、経営戦略の実現をサポートする役職を指します。具体的には、HRBPは組織の目標達成を支援するために、人事部門とビジネス部門の間で協働し、戦略的な人事サポート(例:従業員のキャリア開発、パフォーマンス管理など)を実施します。
HRBPの活動は、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体の効率と生産性を高めることに重点を置いています。重要なのは、HRBPが単に人事関連の業務を遂行するのではなく、ビジネスの成果に直接貢献する戦略的なパートナーとして機能することです。
2.OPs(オペレーションズ)
OPs(オペレーションズ)は、人的資源に関するオペレーション実務を指します。日々の人事関連業務を効率的かつ効果的に行うため、アウトソーシングなども推進し、コストの最適化も実現します。具体的には、後述するCoEが設計したソリューションの運用管理を担い、採用プロセスや、入社後のフォロー、福利厚生、勤怠管理など、定型業務を行います。
OPsは人事データの管理と分析においても重要な役割を果たします。効果的なデータ管理と分析により、人事戦略の策定と実行において必要なインサイトを提供し、組織の意思決定をサポートします。
3.CoE(センターオブエクセレンス)
CoE(センターオブエクセレンス)は、人事に関する専門知識やノウハウが集結した組織です。ビジネスパフォーマンスの向上、業務効率化、社内イノベーションの促進を目的とし、部署間の連携強化や情報共有の促進に寄与します
例えば、採用活動、評価制度、報酬制度、研修プログラムなどに関する多岐にわたる制度設計や開発を行います。総じて、組織内の他の人事機能と密接に連携し、一貫した人事施策の実施をサポートすることが役割といえます。
4.OD&TD(組織開発&タレント開発)
OD(組織開発)は、企業理念を浸透させ、組織を理想的な方向へ導く組織開発を指します。一方TD(タレント開発)は、理想の組織を作るために必要な人材育成を行い、活躍してもらうことを意味します。
OD&TDは、組織と従業員の両方の視点から、組織の持続的な成長と成功を支援する役割があります。ODによって組織レベルでの変革と発展を促し、TDによって個々の従業員の能力とキャリアの発展をサポートすることで、組織は変化に対応し、競争力を持続させられるのです。
戦略人事の体制構築で必要な要素
企業組織で戦略人事の体制構築を行う場合、以下の点に留意するのが大切です。
● 自社の経営ビジョンを理解する
● 必要な人物像を明確に定義する
● 全社的な目線合わせを行う
それぞれ詳しく解説します。
自社の経営ビジョンを理解する
戦略人事においては、自社の経営方針を明確に理解し、社会における役割と使命を深く理解することが求められます。中長期にわたる経営戦略やビジョンを徹底的に把握し、それらを実現するために必要な課題を特定することが重要です。
このプロセスでは、人事部門の責任者が経営層と緊密に連携した上で、経営課題、経営目標、企業理念と人材マネジメントとの関連性について深く議論し合うことが大切です。
必要な人物像を明確に定義する
経営戦略を具現化するためには、必要な人材の特性や能力を明確に定義することが求められます。この作業においては、単に専門的な知識やスキルだけでなく、経営戦略や事業戦略に対する深い理解も必要とされます。
候補者の価値観や性格面も考慮に入れ、組織の文化や目指す方向性との適合性を評価することが重要です。
全社的な目線合わせを行う
戦略人事の成功は、経営層だけでなく、従業員全体の理解と協力に大きく依存しています。そのため、組織全体を通じて戦略人事の理念と目的についてのコミュニケーションを促進し、全従業員が新しい取り組みに積極的に参加するよう促す必要があります。
高い成果を発揮するためには、マネジメントスタイルの改善や「グリット(粘り強さと情熱)」の育成など、個人の成長と組織の発展を支える要素も重要だと認識しておきましょう。
戦略人事を実践する際のポイント
戦略人事を成功させる上では、以下の点に留意しましょう。
● 戦略人事の成果指標を明確に設定する
● 経営戦略と整合性のとれた内容にする
● 現場からの理解を得る
上記について、詳しく解説します。
戦略人事の成果指標を明確に設定する
戦略人事では、自社の人事管理上の目標や成果を明確にすることが重要です。これは、経営戦略と人事管理の統合を図る上でのベース部分となります。
成果指標には、戦略遂行に必要な従業員の適切な配置、必要な活動の促進、従業員の満足度とモチベーションの向上、部門ごとの人事問題の解決などが含まれるべきです。これらの指標は、組織の目標達成と従業員のエンゲージメント向上の両方に貢献するでしょう。
経営戦略と整合性のとれた内容にする
人事施策は、経営戦略と一致している必要があります。これを実現するためには、人事管理全体の整合性を意識し、各施策がビジネスの目標と連動しているかを確認する必要があります。
キャリア自律施策、社内公募制度、キャリア開発プログラムなどを戦略的に導入し、従業員の成長と企業の発展を支える人材管理を心がけましょう。人事部門のリーダーやHRBPは、これらの施策が組織全体の戦略と整合するよう努めることが求められます。
現場からの理解を得る
戦略人事を成功させるためには、経営層と現場部門との間で共通の理解と目的を共有し、協力を得ることが不可欠です。この際、従業員のモチベーションやエンゲージメントを考慮し、戦略人事の目的と方法を明確に伝えることが重要です。
経営戦略の明確化と具体的な戦略人事の目標・成果の設定は、全体の方向性を示し、組織全体の協力を促進するために不可欠でしょう。
まとめ
戦略人事は、経営戦略の実現に不可欠な要素であり、企業の競争力強化と持続可能な成長に寄与する取り組みです。
経営ビジョンの理解から始まり、必要な人材像の定義、全社的な目線の合わせ方まで、戦略人事は多面的なアプローチが求められます。重要なのは、戦略人事の成果指標を明確に設定し、人事施策が経営戦略と整合しているかどうかです。
経営層と従業員の間で目線合わせを行った上で、戦略人事への協力を促進しつつ、自社の競争力を強化していきましょう。