日本では労働力不足が大きな課題となっています。アウトソーシング(外部委託)は、そのなかで企業がリソース不足の場合に活用できる手段のひとつです。本記事では、アウトソーシングの概要やメリット、活用する際の検討ポイントについて詳しく解説します。
2030年問題に代表されるように、今後の日本では労働力不足が大きな課題となっています。アウトソーシング(外部委託)は、企業がリソース不足の場合に活用できる手段のひとつです。実際にアウトソーシングは、コスト削減や品質の向上、スポットでの専門的人材の活用など、複数のメリットがあります。
本記事では、アウトソーシングの概要やメリット、活用する際の検討ポイントについて詳しく解説します。
アウトソーシングとは
アウトソーシングとは、企業が自社の業務プロセスの一部を効率化、専門化、またはコスト削減の目的で外部事業者に委託することです。アウトソーシングの実施により、自社のコアとなる業務に集中できるようになります。
アウトソーシングの種類
アウトソーシングには、いくつかの種類があります。具体的には、以下のとおりです。
種類 |
内容 |
BPO (ビジネス・プロセス・アウトソーシング) |
経理、人事、顧客サービスなどの非核心業務を外部に委託する。効率化とコスト削減が主な目的。 |
ITO (ITアウトソーシング) |
IT関連の業務(例:ソフトウェア開発、システム管理、データセンター運用など)を専門企業に委託する。最新技術の活用とITコストの削減が目的。 |
KPO (ナレッジ・プロセス・アウトソーシング) |
高度な分析や研究、専門的な知識を要する業務(例:市場調査、法律相談、財務分析など)を外部に委託する。専門性の高いサービス提供が目的。 |
人材派遣との違い
アウトソーシングと混同されがちな外注方法として「人材派遣」が挙げられます。人材派遣は、特定のスキルを持った労働者を一時的に企業に提供するサービスであり、業務そのものではなく「人」を提供する点に特徴があります。
アウトソーシングでは、業務の指揮命令権はアウトソーシング会社の責任者や管理者が持ち、請負契約や委任契約(準委任契約)を締結します。
その結果、アウトソーシングを依頼した企業は、業務スタッフに直接指示を出すことができません。このような契約に違反すると「偽装請負」とみなされるリスクがあります。
アウトソーシングの場合は、成果物の納品や作業の遂行に基づいて対価を支払う形式が採られるのが一般的です。一方人材派遣では、派遣スタッフの労働時間に基づいて対価が発生します。
アウトソーシングのメリット
アウトソーシングを活用するメリットは、以下のとおりです。
● コスト削減につながりえる
● 業務・サービスの品質を高められる
● スポットで専門的な人材の力を借りられる
● 自社社員はコア業務に集中できる
それぞれ具体的に解説します。
コスト削減につながりえる
アウトソーシングを利用することで、固定費を変動費に転換でき、コスト削減につながる可能性があります。例えば、自社で業務を行う場合に比べて、専門企業に業務を委託することにより、人件費や設備投資などのコストを削減できる場合があります。
専門企業が持つ効率的な業務プロセスやノウハウを活用することで、自社事業にかかる全体コストをさらに下げることが可能です。
業務・サービスの品質を高められる
アウトソーシングを適切に実施すれば、専門的な知識や技術を持つ外部の企業の力が借りられ、サービスや製品の品質を向上させられるでしょう。
アウトソーシング先の企業は、その分野の専門家であるため、最新の技術や手法を活用した高品質な成果の提供が期待できます。
スポットで専門的な人材の力を借りられる
アウトソーシングを活用することで、特定の専門知識が必要な時に一時的に専門的な人材を利用できます。これにより、専門性が高い業務を効果的に進められ、プロジェクトの精度を高めることができるでしょう。
特に、新技術の導入や市場調査など、一定期間に高度な専門知識が求められる業務において、アウトソーシングは大きな強みとなり得るでしょう。専門的な知識やスキルを持つ人材を柔軟に活用することで、企業はより迅速かつ効率的に目標を達成できます。
自社社員はコア業務に集中できる
ノンコア業務を外部に委託することで、自社の社員がコア業務に集中できる環境を構築することができます。これにより、社員の生産性が向上し、企業全体の業務効率が高まります。
社員が自社の主要な業務に専念できることで、競争力のあるサービスや製品の開発を進められるでしょう。コア業務への集中は、企業がその業界内で差別化された地位を確立し、市場での優位性を保つために不可欠です。社員が自社の強みを最大限に活かす取り組みに専念できれば、長期的な競争力の強化に繋がります。
アウトソーシングのデメリット
一方で、アウトソーシングには次のようなデメリットも存在します。
● 社内にノウハウが蓄積されない
● 情報漏えいのリスクが高まる
● コストがかさむケースがある
それぞれ個別に見ていきましょう。
社内にノウハウが蓄積されない
アウトソーシングを行うと、外部企業が業務を遂行するため、その過程で得られる専門的な知識や技術が自社内に蓄積されないことになります。加えて、委託先が業務をどのように処理しているのかが社内で把握しにくくなる場合もあります。その結果、自社で同様の業務を行う能力が育たず、長期的に見ると企業の自立性や競争力の低下に繋がる可能性があります。
これは特に、将来的に業務を内製化しようと考えている場合に大きな問題となり得るでしょう。自社で業務を遂行することでしか得られないノウハウの蓄積や業務プロセスの知識が欠けることで、企業が成長するための基盤が弱まりかねません。
情報漏えいのリスクが高まる
外部の企業に業務を委託することで、機密情報が第三者に渡るリスクが高まります。委託先のセキュリティ対策が不十分であった場合、重要な情報が漏えいする可能性があり、自社の信頼性やブランド価値を毀損することも考えられます。
このような情報漏えいは、顧客からの信頼を失うだけでなく、法的な責任を問われる可能性もあります。
そのため、アウトソーシングを検討する際には、委託先のセキュリティレベルや情報管理体制を十分に評価し、適切な契約条項を設けましょう。
コストがかさむケースがある
社員のコア業務の集中や業務効率化のためにアウトソーシングを利用したが、結果として費用対効果が悪くなるケースもあります。委任にまつわる業務に想定以上に時間がかかったり、上で挙げた「ノウハウが蓄積できな」かったりなど、自社のみで対応するコストを考えるとコストがかさむ場合もありえます。
以上のようなアウトソーシングによる潜在的なリスクを認識し、より有効な業務委託を目指しましょう。
アウトソーシングを活用する前の検討ポイント
アウトソーシングを活用する際には、事前に以下のポイントについても勘案しておきましょう。
● 現状の課題を明確化する
● 委託する業務とその内容をしっかり見極める
次項より、具体的に解説します。
現状の課題を明確化する
アウトソーシングを導入する前に、企業が直面している問題や課題を明確にすることが大切です。
例えば「業務の非効率性」「費用対効果の悪化」「人材の不足」など、現状の課題を正確に把握することで、アウトソーシングによって解決すべき具体的な目標を設定できます。
これにより、アウトソーシングの効果を最大限に活用するための明確な方向性を定められるでしょう。結果的に「どの業務を外部に委託すれば最大の効果が得られるか」を見極められます。
委託する業務とその内容をしっかり見極める
アウトソーシングを成功させるためには、委託する業務とその範囲を正確に定義する必要があります。委託する業務の内容を具体的に明確化し、期待する成果物やサービスレベルを詳細に定義することで、委託先とのミスマッチを避けつつ、スムーズな業務遂行が可能となります。
業務の範囲や要件が明確であればあるほど、アウトソーシングの成果はより具体的かつ測定可能なものとなりますので、自社で期待する効果を実現しやすくなるでしょう。
まとめ
アウトソーシングの導入は、企業が直面する課題を解決し、ビジネスの成長を加速させるための有効な手段です。コスト削減や品質の向上、専門性の確保など、アウトソーシングには多くのメリットがあります。
ただし、情報漏えいやノウハウの蓄積ができないなどの潜在的なリスクはあるため、デメリットを最小限に抑えるためにも、事前の準備とアウトソーシング先の選定はしっかり行うことが大切です。
アウトソーシングは企業が自身のコア業務に集中し、競争力を高めるための戦略のひとつと認識し、きちんと要件定義や準備を行った上で活用しましょう。