採用コストとは、企業が新たな人材を獲得するために必要となる経費全般を指し、効率的に管理し、最適化することが企業の持続的な成長と人材の質の向上に直結します。本記事では、採用にかかる費用の内訳や相場感、さらにはこれらのコストを抑えるための方法を紹介します。
採用コストとは、企業が新たな人材を獲得するために必要となる経費全般を指します。採用活動には多岐にわたるコストが含まれており、これらを効率的に管理し、最適化することが企業の持続的な成長と人材の質の向上に直結します。
本記事では、採用にかかる費用の内訳や相場感、さらにはこれらのコストを抑えるための方法を紹介します。
採用コストとは
先で述べた通り、採用コストとは企業が新たに従業員を採用する過程で発生するさまざまな費用のことを指します。
これらのコストは、大きく「外部コスト」と「内部コスト」の二つに分類されます。それぞれ、個別に見ていきましょう。
外部コスト
外部コストとは、主に「求人広告費」「人材紹介会社への手数料」「面接などに利用するツールの利用料」など、企業が外部のサービスなどを利用した際に発生する費用です。
採用フェアやキャリアイベントへの参加費用も、外部コストの一部として考えられます。これらのコストは、適切な人材を見つけ出し、企業へ引き寄せるために不可欠な投資といえるでしょう。
内部コスト
内部コストは、採用プロセスを遂行するために企業内部で発生する費用を指します。具体的には、「採用プロセスに関わる社内スタッフの人件費」「選考過程で費やされる面接官の時間コスト」「採用管理システムの運用にかかる費用」などです。
新入社員の研修やオンボーディングに要する費用も、内部コストに含まれる重要な部分でしょう。これらの費用は、新しい従業員が迅速に職場に適応し、生産性を発揮できるようにするために必要な投資といえます。
【2024年版】採用コストの平均相場
ここからは、各省庁・公的機関が公開している情報を基に、以下の領域における採用コストの相場をみていきましょう。
● 新卒採用の相場
● 中途採用正社員採用の相場
● 派遣社員の相場
● 紹介予定派遣の相場
次項より、個別に解説します。
新卒採用の相場
リクルート就職みらい研究所の「就職白書2020」によると、2020年卒の新卒1人あたりの平均採用コストは93万6,000円と、前年より増加したと判明しています。
採用には求人広告の掲載費、人材紹介会社への手数料、面接過程での交通費や宿泊費の支給、採用管理システムの利用費用などが必要です。これらを合算すると、1人を採用するのには100万円近くの費用が必要になります。
(出典:リクルート就職みらい研究所「就職白書2020」)
さらに、いわゆる第二新卒と呼ばれる卒業後3年以内の既卒者や日本の大学・大学院を卒業予定の外国人留学生の採用に積極的に取り組んでいる企業も一定数存在しています。実際、前出の調査によると、卒業後3年以内の既卒者の採用を行っている企業は24.5%、外国人留学生の採用を行っている企業は20.9%となっています。
このように多様な人材へのアプローチが採用戦略の一環として取り入れられている企業ではアプローチ手段が増え、採用コストがかさんでいくことになります。今後もこの傾向が続けば、新卒採用の相場感も上昇する可能性があるでしょう。
中途採用正社員採用の相場
前述の「就職白書2020」では、中途採用のコストが103万3,000円であり、新卒採用との差が縮まっていることが指摘されています。
「採用費用の管理・運用」に携わる人事担当者1,400人を対象に実施されたマイナビの「中途採用状況調査2023年版(2022年実績)」では、2022年の企業の中途採用人数は、前年平均の16.3人から19.2人へと約3人の増加がみられたと報告されています。
中途採用において、募集開始から最短2か月未満で採用・入社に至った職種が前年比で増加しており、採用プロセスの効率化が進んでいることがわかります。特に「営業」や「販売・フードアミューズメント」の職種でこの傾向が顕著に見られました。
派遣社員の相場
厚生労働省の「令和3年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」を基にすると、2021年の平均的な派遣料金(8時間換算)は2万4,461円で、前年度比で1.1%の増加がみられました。一方、派遣労働者の賃金(8時間換算)は平均1万5,698円で、前年度比で0.7%増加しています。
とはいえ、派遣業務は多岐にわたり、技術者、医療関連職従事者、一般事務従事者、製造業務従事者など、さまざまな業種で派遣労働者が活躍しています。
業種間で派遣料金と派遣労働者の賃金に差があり、特に専門性が高い分野では双方ともに高く設定される傾向がある点には留意が必要です。
紹介予定派遣の相場
紹介予定派遣とは、派遣社員として一定期間勤務した後、その派遣先の企業に正式に雇用されることを目指す雇用形態です。この雇用形態の特徴は、派遣社員と企業がお互いをよく知ることができ、正式な雇用に向けてのリスクを低減できる点にあります。
紹介予定派遣の採用コストには、主に派遣期間中の料金と採用決定時の手数料の二つがあります。
派遣期間中の料金は、労働者の時間単価及び実働時間を基に算出され「時間単価×実働時間+手数料 」で算出可能です。この手数料は、派遣社員の月給の約3割前後とされています。採用決定時の手数料は、労働者の理論年収に対する料率で決められ、この料率は35%前後で設定されることが多いです。
採用コストを削減するためのポイント
採用コストをなるべく抑えるためのポイントは、次のとおりです。
● ①:リファラル採用を行う
● ②:ミスマッチを減らす
● ③:自社の採用サイトに力を入れる
● ④:無料求人サービスを使う
次項より、個別に見ていきましょう。
①:リファラル採用を行う
リファラル採用は、企業に勤める従業員が友人や知人を会社に推薦する採用方法です。この方法を採り入れることで、求める人材と会社とのマッチ度の高さと、推薦を行った従業員のやる気の向上が見込めます。従業員自身が推薦することにより、採用候補者の企業文化へ理解も期待でき、新たな人材が早期に組織に溶け込む助けとなるでしょう。
これらの利点から、リファラル制度という採用候補者を紹介した従業員にインセンティブを支払う仕組みを取り入れている企業もあります。このインセンティブ費を含めたとしても、採用までにかかる費用は求人広告などの手段よりはコストを下げることができます。この点もリファラル採用のメリットといえるでしょう。
②:ミスマッチを減らす
採用プロセスにおける候補者と企業のミスマッチを減らすことは、早期離職を防ぎ、再採用による追加コストを削減するために非常に重要です。
この目的を達成するためには、職務の内容や求める人材像を明確に記述した職務記述書 の作成をするなど、応募者への事前の情報共有が欠かせません。また、人材紹介会社を利用する場合は、その企業に希望をしっかり伝えることで、ミスマッチを減らせる可能性があります。
正確な職務情報の提供により、応募者が自らの適性を判断しやすくなり、ミスマッチの発生リスクを低減できます。
③:自社の採用サイトに力を入れる
自社の採用サイトを充実させることは、採用戦略においても優位に働きます。採用サイトを充実させることで、企業文化や求める人材像を候補者に対して正確に伝えられます。採用情報の透明性を確保することは、企業に興味を持つ適切な候補者を引き寄せ、採用プロセスの効率化に大きく貢献します。
応募者は、企業のWebサイトを通じて企業の価値観や職場環境を事前に理解でき、より自分に合った職場かどうかを判断できるようになります。その結果、応募者と企業の間のミスマッチを減らし、採用後の満足度を高めることにつながるでしょう。
④:無料求人サービスを使う
無料求人サービスを活用することは、採用コストを削減する効果的な手段です。これらのサービスは、特に予算が限られている中小企業やスタートアップ企業にとって、貴重なリソースとなり得ます。
ただし、無料求人サービスを用いる場合には、求人広告の質や応募者とのコミュニケーションに特に注意を払う必要があります。質の高い広告を作成し、応募者とのやり取りを丁寧に行うことで、無料でも高い効果を期待できます。これにより、採用コストを抑えつつも、企業にとって価値のある人材獲得の機会を最大限に活用できるでしょう。
まとめ
企業にとって、採用活動に伴うコストは避けて通れない大きな投資です。採用コストを抑制し、企業の財務健全性を保つためには、採用コストの内訳を適切に理解し、それぞれのコストを効率的に管理する戦略を立てる必要があります。
採用活動の結果を定期的に分析し、改善点を見つけてはその都度対策を講じていけば、継続的に採用コストの最適化を図ることが可能です。採用プロセスの各段階で発生するコストを見直し、低コストで効果的な採用方法を活用することで、運用コストの削減できるでしょう。