派遣社員の採用はリソース不足を解消する有用な手段であり、その柔軟性から多くの企業で活用されています。そこで本記事では、派遣社員にやらせてはいけない業務や、行ってはいけない指示について詳しく解説します。
遣社員の採用はリソース不足を解消する有用な手段であり、その柔軟性から多くの企業で活用されています。しかしながら、労働者派遣法などにより派遣社員にやらせてはいけない業務が定められているため、派遣社員の活用を検討する際は事前に確認が必要です。
そこで本記事では、派遣社員にやらせてはいけない業務や、行ってはいけない指示について詳しく解説します。これらの規定は、派遣社員が不当な条件で業務を強いられることなく、公平かつ安全な労働環境で働くために非常に重要なものですので、しっかり確認してきましょう。
派遣社員の業務範囲に関する規定とは
派遣社員の業務範囲は、派遣契約で細かく定められており、派遣社員は定められた範囲内でのみ業務を遂行することが義務付けられています。そのため、契約書に記載されていない業務を派遣社員に行わせることはできません。これは、派遣社員が想定外の業務により不利益を被ることを防ぐための重要な規定です。
さらに、派遣社員に対して割り振ってはならない業務は、労働者派遣法によっても具体的に規定されています。同法律は、派遣社員の権利を守り、安全かつ健全な労働環境で働けるようにするために制定されました。労働者派遣法に違反する業務を派遣社員に任せることは、法律によって明確に禁じられており、企業にはこの法律を遵守する責任があります。
企業側は派遣社員の権利を尊重し、法律が定める範囲内で適切な業務を提供することが求められています。以下で詳しく見ていきましょう。
派遣社員にやらせてはいけない業務
以下のような業務は、派遣社員に従事させてはいけないため、注意が必要です。
● 建設業務
● 警備業務
● 医療関連業務
● 港湾運送業務
● 士業
それぞれ具体的に見ていきましょう。
建設業務
建設業務において、派遣社員が直接作業に従事することは禁止されています。これには、土木や建築物の建設、リフォーム、保存、修理、破壊や解体、またそれらに関する準備作業などの多岐にわたる業務が含まれます。
建設業界は閑散期と繁忙期の差が非常に大きいため、派遣社員も活用されていますが、事務、CAD、施工管理等に限られており、上記のような業務に関わることはできません。この規制は、専門性の高い業務への適切な人材配置と安全性を確保するため実施されています。
警備業務
警備業務に関しても、派遣社員を活用することは許されていません。警備業務とは、盗難などの犯罪行為や事故を防ぐため、マンションや会社、商業施設、イベント会場、工事現場などで行われます。
警備業務の性質上、専門知識や研修を受けた人材による実施が求められます。また、危険が伴う業務であるため、派遣制度を通じての業務実施は、安全性と品質保持、セキュリティ維持の観点からも避けられるべきです。
医療関連業務
医療関連業務においては、病院や診療所での派遣社員の利用が原則として禁止されています。具体的には、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、保健師、助産師などの派遣社員利用が禁止されており、主に以下業務内容が当てはまります。
画像出典:厚生労働省『労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・』《労働者派遣事業が禁止されている医療関係業務》)
ただし、産前産後の代替要員や僻地での医療支援など、以下条件に当てはまる場合は例外的に派遣社員の活用が許可される場合があります。
1. 紹介予定派遣をする場合
2. 当該業務が産前産後休業、育児休業、介護休業を取得した労働者の業務である場合
3. 医師の業務であって、当該業務に従事する派遣労働者の就業の場所が以下のいずれかに該当する場合
港湾運送業務
港湾運送業務も派遣社員が従事することが許されていない業務のひとつです。
湾岸と船舶間の貨物の積み下ろしや貨物の移動、荷ほどきなどの作業が含まれるこの業務は、建設業務と同様に閑散期と繁忙期の差が大きいため、「港湾労働者派遣制度」という派遣制度が設けられています。そのため、一般の派遣社員による従業は認められていません。
士業
士業に関連する業務に派遣社員を用いることは、禁止されています。税理士、弁護士、社会保険労務士、司法書士などが該当します。
これらの業務自体、専門資格を持つ者が個々に委託を受けて行うものであり、指揮命令を受ける派遣労働という形態ではないため禁止とされています。また、建築士事務所における管理建築士の業務も、その専門性から派遣の対象外となっています。
派遣社員に指示してはいけないこと
派遣社員を活用する場合には「指示してはいけない」事柄も存在します。 具体的には、以下のとおりです。
● 契約書にない業務
● 所属部署外での業務
● 契約外の出張や残業
● 飲み会や接待
● 二重派遣・偽装請負
それぞれ個別にみていきましょう。
契約書にない業務
派遣社員には、契約書に記載されている業務以外の業務に従事させることは禁止されています。これは、派遣社員が予期しない負担を強いられることを防ぐと同時に、労働者派遣法にのっとった適正な業務運用を確保するために重要です。
派遣社員側も社内の人間関係を思ってはっきりと断れない場合もあります。スタッフに負担をかけないよう、しっかりと業務内容を確認しましょう。
所属部署外での業務
所属部署外での業務を派遣社員に指示することはできません。派遣社員は、あらかじめ定められた特定の部署やプロジェクトに配属されるため、その範囲を超えた業務は契約違反となり得るからです。
このような指示は、派遣社員の職務の明確性を損ない、不当な労働条件を強いることにもつながりかねません。したがって、派遣社員の適正な管理と利用には、契約に基づいた業務範囲の遵守が求められます。
契約外の出張や残業
派遣社員に対して契約外の出張や残業を要求することはできません。派遣契約では労働条件が明確に定められているため、これを超える要求は、労働基準法に違反する恐れがあります。
企業は派遣社員の労働条件を尊重し、合意された範囲内での業務遂行を保障しなければなりません。
飲み会や接待への参加の強要
飲み会や接待への参加を派遣社員に強制することはできません。これらの活動は業務の範囲外であり、参加は個人の自由意思に基づく必要があります。
職場のコミュニケーションを促進する意図があっても、派遣社員の意向を尊重し、参加を強要することのないよう注意が求められます。
二重派遣・偽装請負
二重派遣や偽装請負は、法律に違反する行為です。派遣社員を他の企業へ再派遣したり、請負契約と偽って発注者の指揮命令下に置いたりすることは、労働者派遣法に反するため、実施してはいけません。
これらの行為によって、派遣社員の権利が侵害されるだけでなく、企業に重大な法的責任が生じる可能性があります。法律を遵守し、透明性のある誠実な業務運営を心がけましょう。
派遣社員に活躍してもらうコツ
以上を踏まえた上で、派遣社員にさらに活躍してもらうためには、次のポイントを踏まえておきましょう。
● 正社員と平等に扱う
● 契約内容をしっかりと把握する
以下より、詳しく解説します。
正社員と平等に扱う
正社員と派遣社員を平等に扱うことは、派遣社員にその能力を存分に発揮してもらうための基本事項です。職場においては、正社員であろうと派遣社員であろうと、全員の貢献を尊重し、公平な機会を提供することが大切です。
これにより、派遣社員のモチベーションの向上が期待でき、組織全体の生産性の向上にもつながるでしょう。派遣社員も正社員と同様に扱うことで、職場の一員としての帰属感や満足感を高められます。
契約内容をしっかりと把握する
契約内容に書いていない業務を依頼することは禁止されています。そのため、派遣先企業側が契約内容をしっかり把握することが大切です。
これは、派遣社員に安定した労働環境を提供するという点でも重要です。結果として、派遣社員が自信を持って業務に取り組めるようになり、職場全体の効率性と生産性が向上するでしょう。
まとめ
派遣社員を採用する際には、公平で安全な労働環境で働けるようにするため、契約内容の遵守が不可欠です。
企業は、派遣社員の業務範囲や労働条件を明確にし、社として正社員との派遣社員の平等な扱いの心掛けや、安定して業務に取り組んでもらえるよう労働環境をよりよくすることにも努める必要があります。
こういった取り組みが、結果的には「派遣社員のモチベーションの向上」「職場の生産性のアップ」などにもつながるでしょう。