ネガティブフィードバックとは?伝え方のポイント・注意点を紹介

強い組織を構築するためには、良質な人材を確保するだけでなく、適切な育成と評価を行うことも大切です。的確なフィードバックを通じて部下の意欲や能力を引き出すことで、その人の持つ本来の力を存分に発揮させることができます。

とはいえ、人事評価で悩みがちなのが、ネガティブな評価の伝え方です。従業員の良い面を積極的に伸ばすことはもちろん重要ですが、マイナス面を指摘することも避けられません。

今回は「ネガティブフィードバック」のメリットや注意点、伝え方のポイントを解説します。

目次

ネガティブフィードバックの意味

06-02

「ネガティブフィードバック」とは、文字どおり相手のネガティブなポイントを指摘して、改善を促すためのフィードバックです。マイナスの側面に目を向ける評価手法であるため、いくつか注意点もありますが、正しく活用すれば人材育成のための効果的なアプローチになるでしょう。

ここではまず、ネガティブフィードバックの基本的な意味について見ていきましょう

ネガティブフィードバックとは

ネガティブフィードバックとは、本来は工学分野における評価手法であり、被評価者のモチベーションや能力がマイナス方向へ増幅されてしまうフィードバックを指します。しかし、ビジネスの分野では「被評価者の問題点を指摘し、改善を促すためのフィードバック方法」として用いられるケースが一般的です。

ビジネスシーンにおけるネガティブフィードバックの目的は、評価を受ける人をプラスの方向へと転換させることにあります。ただし、被評価者にとっては聞きたくないと感じる可能性もあるため、ポジティブフィードバックと比べると、伝える際の配慮や注意が必要でしょう。

ハラスメントの問題などとも関係するので、被評価者の立場や心情に寄り添ったうえで、「事実」に基づくフィードバックを実施することが求められます。

フィードフォワードとの違い

ネガティブフィードバックと混同されやすいビジネス用語に「フィードフォワード」があります。フィードフォワードは、「フォワード」という言葉が示すように、過去の出来事にはとらわれず、「未来」の問題解決に向けた対話や評価を意味するものです。

ネガティブフィードバックも未来を指向しているコミュニケーションではあるものの、過去の問題点をきちんと指摘するという点で、フィードフォワードとは異なります。また、フィードフォワードは双方の役割分担がなく、同期の社員同士などの横のつながりでも行われるのが特徴です。

一方ネガティブフィードバックでは、評価する主体と評価される客体の設定があり、基本的には上司から部下へのアプローチが想定されています。2つの言葉の意味の違いを正しく理解したうえで、適切に使い分けましょう。

フィードバックの実践方法については、こちらの資料でも解説しています。


ダウンロードはこちら

ネガティブフィードバックを行う3つのメリット

ネガティブフィードバック 06-03

ネガティブフィードバックはマイナスの側面に焦点を当てるため、当然ながら被評価者のモチベーションが下がるなどのリスクが存在します。しかし、それでもビジネスの現場で用いられるのは、さまざまなメリットがあるためです。

ここでは、おもなメリットを3つに分けて解説します。

社員の成長を促すことができる

ネガティブフィードバックは、使い方やタイミング次第で社員に成長を促せる評価手法です。現在の人材管理においては、退職理由として「適切な評価を受けられていない」「仕事に手ごたえを感じられない」といった不満が原因となるケースも少なくありません。

ネガティブフィードバックによって適度に課題を設けることで、社員側はそれを乗り越えようとする力を発揮でき、周囲にも期待や熱意が伝わります。

目標達成へのモチベーションを高められる

ネガティブフィードバックは、設定した目標を達成するための軌道を適切に修正して、より良い方向に導くためのコミュニケーションでもあります。部下の行動が目標達成につながらない場合、そのまま放置するのではなく、最短ルートを提示するのがネガティブフィードバックの重要な役割です。

また、業務がうまくいかないときには、その原因を一緒に見つめ直して、モチベーションの向上に結び付けることもできます。上司が部下と共に原因を探り出し、目標達成に向けて一緒に行動していく姿勢を見せることが大切です。

エンゲージメントの向上につなげられる

優秀な従業員ほど、自身を成長させたいという意識が高く、自らの改善点を積極的に探そうとする傾向があります。そうした社員に対してネガティブフィードバックを行うことで、エンゲージメントの向上につなげられるのも大きなメリットです。

また、適切なタイミングでネガティブフィードバックを行うことは、ポジティブフィードバックの信頼性を高めることにもつながります。

たとえば、失敗を自覚しているにもかかわらず、それについてのネガティブフィードバックがなければ、評価に対する信頼性が損なわれる可能性もあります。一方、ポジティブフィードバックやネガティブフィードバックが適切なタイミングや内容で行われていれば、評価される側の安心感にもつながるでしょう。

失敗に向き合う場がなければ、成長の機会が得られないと感じてしまう社員も少なくはありません。単に前向きな評価を伝えるのではなく、本人が仕事で感じた手ごたえと、周囲の評価が一致するよう意識しながらフィードバックすることが肝要です。

ネガティブフィードバックにおける注意点

ネガティブフィードバック 06-04

ネガティブフィードバックを行う際は、適切な伝え方と相手への配慮を要します。ここでは、どのような点に気をつけるべきか、具体的に解説します。

冗長で回りくどい表現を避ける

ネガティブフィードバックを伝える際は、誤解なく評価を伝えるためにわかりやすくシンプルな表現を心がけることが大切です。回りくどい表現は避け、問題点と改善点を過不足なく伝えることを意識しましょう。

また、主観的な意見を避け、事実に基づいて指摘を行うことが大切です。主観的な評価は部下の納得や共感を得づらく、モチベーションを下げかねません。こうした誤りを避けるためにも、感覚的な表現を使わず、具体的な内容で伝えることが大切です。

適切なタイミングで行う

ネガティブフィードバックを行うなら、遅くとも1週間以内には実行しましょう。時間が経過してから伝えても、フィードバックの効果は限られてしまううえ、部下にも疑問が生じてしまう可能性があります。

すぐにフィードバックを得られなかった理由など、被評価者としては関連性が低い事情にも意識が向いてしまうため、シンプルに指摘内容を受け止めるのが難しくなるのです。指摘の対象となる事象が起きた場合は、なるべく間を置かずにネガティブフィードバックを実行するようにしましょう。

フィードバックを行うサイクルを事前に取り決めておくなどして、一定のサイクルで対応していくことが大事です。

大勢の前で指摘しない

ネガティブフィードバックは必ず一対一で行うことが大切です。大勢の前で指摘すれば、部下のプライドが大きく傷ついてしまい、信頼関係を損なうリスクがあります。
また、当事者以外から見るとパワハラのような印象を受ける可能性があり、組織内のやりとりがギクシャクしてしまうケースもあるでしょう。

大事なことは、あくまでも当事者の失敗を見つめて改善を促すことです。あらかじめ無関係なリスクは取り除いておくようにしましょう。

ネガティブフィードバックを上手に伝えるポイント

ネガティブフィードバック 06-05

ネガティブフィードバックを行ううえでは、評価をする側もきちんと準備をして、過不足なく上手に伝える工夫を凝らすことが大切です。ここでは、特に意識しておきたいポイントを3つに分けて見ていきましょう。

信頼関係をきちんと構築しておく

ネガティブフィードバックを行う際は、前提条件として信頼関係をきちんと築いておくことが重要です。ときには辛辣な内容を伝えなければならないこともあるため、信頼関係が築けていない状況下で指摘しても、成長につながらないばかりか反発を招いてしまうリスクもあるでしょう。

ネガティブフィードバックを行う際は、ポジティブフィードバックを実行するとき以上に良好な関係性が構築されていることが重要となります。そのため、焦って実践しようとせず、日常的なコミュニケーションによってお互いの理解と信頼関係を深めておくことが大切です。

ポジティブフィードバックと絡めて指摘する

マイナス面ばかりを指摘していると、たとえ信頼関係があっても素直に受け止めることが難しくなります。そのためネガティブフィードバックを行う際は、適度にポジティブフィードバックも交えることを心がけましょう。

プラス面を一緒に伝える方法では、厳しい指導を苦手とする上司でも実践しやすく、また部下も前向きに受け止めやすくなります。繰り返しにはなりますが、ネガティブフィードバックはあくまで被評価者の気づきと成長を促すことを目的としているため、意図が的確に伝わるように配慮することが大切です。

なお、ポジティブフィードバックも客観的かつ具体的な表現を通して行う必要があります。主観的であいまいな内容では、部下に「とってつけたようなフォロー」として受け止められてしまう可能性があるので、伝える言葉や情報に注意しましょう。

社員を追い詰める発言を行わない

ネガティブフィードバックでは、相手の人格を否定したり、責任を押し付けたりする発言を行わないことが原則です。相手の人格に踏み込んだ発言はパワハラにつながり、信頼関係を毀損してしまう可能性があります。

あくまでも、業務で生まれた事実に基づいて評価し、今後の問題解決という目的を忘れてはなりません。感情的な発言をしないために、時間的に余裕のあるタイミングで話をすることが大切です。

まとめ

ネガティブフィードバックは、ときとして相手に重要な気づきを与え、成長を促すきっかけとなります。マイナス評価であっても、失敗の原因を丁寧に見つめ、一緒に改善方法を探すことで、逆に信頼関係が深まるケースもあるでしょう。

とはいえ、アプローチを誤れば相手の意欲を低下させたり、信頼関係を損なったりしてしまうリスクもあります。ネガティブフィードバックを正しく活用するためには、何よりも日頃の人間関係の構築が重要であり、評価する側は伝える際のコツと注意点を把握しておく必要があります。

ネガティブフィードバックの重要性と注意点を理解し、効果的に人材育成へ活用していきましょう。

フィードバックの実践方法については、こちらの資料でも解説しています。


ダウンロードはこちら