「より柔軟性を持った組織づくりがしたい」「縦軸だけの単調な組織構造から脱却したい」という場合には、チームビルディングゲームを導入してみるのも一つの方法です。チームビルディングゲームは、正しく導入すればチーム内の結束力を高め、さまざまな課題に対応できる力強い組織を構築できます。
チームビルディングの重要性を確認したうえで、ゲームの種類や特徴を見ていきましょう。
チームビルディングゲームとは
チームビルディングゲームとは、「チームを作る」ために行われるゲームのことです。ここで扱われるチームとは、共通のターゲットや目的を持つ集団という意味であり、経験や役職が異なっていても問題ありません。
異なる個性や能力を持った人材が集まり、それぞれが自発的に動きながら協力体制を作っていくのが、チームビルディングゲームの目的です。新入社員や中堅社員、管理職層など、さまざまな立場の人が想定されているため、基本的には会社組織におけるすべてのメンバーが対象と考えられます。
チームビルディングは、急速にIT化やグローバル化が進むビジネス環境において、特に重要な価値を持ちつつあります。事業のスピード感が加速し、より柔軟な対応が求められるようになったことで、リーダーが特定のメンバーとのみ関わる従来のチームマネジメントでは、競争優位性を保ちづらくなっているのです。
プロジェクトごとに柔軟な編成を行ったり、個人が自発的に行動できる環境を整えたりと、よりしなやかで強靭な組織づくりが求められるなかで、チームビルディングの観点は大きな意味を持っています。
チームビルディングゲームによる効果
チームビルディングゲームにはさまざまなメリットがあります。ここでは、実際に導入することでどのような効果が期待できるのか、おもなポイントを3つに分けて見ていきましょう。
チームに一体感が生まれる
チームビルディングゲームは、正しく導入すればチーム内の一体感を醸成することができます。ゲームを通じて仲間意識が生まれるとともに、チームとしてのミッションやビジョンを浸透させることができるため、自然と結束力が強まっていくのです。
さらに、ゲーム後に振り返りを行うことで、お互いに対する理解や共感が深まり、チーム参加への主体的な姿勢が強固になっていく面もあります。チーム内に一体感が生まれれば、普段の業務でもそれぞれの知識や経験などを柔軟に共有できるようになるでしょう。
たとえば、カスタマーサポートを行う部署であれば、多様なクレーム対応の経験と対策をスムーズに共有できたり、きめ細かなメンタルサポートを行えるようになったりと、全体としての対応能力の向上が期待できます。
個人のパフォーマンスが上がる
ゲームを通じて各メンバーの視野が広がり、チーム全体で物事が考えられるようになるのも大きな効果の一つです。全体的な視点を持つことにより、個人としてどのように貢献すべきかを明確にイメージできるようになり、結果としてパフォーマンスも向上していきます。
チームビルディングゲームを通じて個のパフォーマンスを向上させるためには、ゲームのなかなかで一人ひとりの役割を明確にすることが重要です。特にチームビルディングの初期段階では、リーダーが適切に人材配置を行いながら、それぞれが自身のポジショニングを的確に把握できるように設定します。
メンバーがゲームに慣れてチームが成熟していけば、次第にそれぞれが自分の役割を理解し、積極的に高いパフォーマンスを発揮するようになっていくでしょう。
チームビルディングに使えるおすすめのゲーム5選
チームビルディング研修に活用できるゲームにはさまざまな種類があります。ここでは、比較的取り入れやすく、楽しみながらチームとしての学びが行えるチームビルディングゲームを5つピックアップして紹介します。
NASAゲーム
「NASAゲーム」は、チーム内で合意形成を行いながら課題を解決していく「コンセンサスゲーム」です。もともとNASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙飛行士の採用試験として、専門家の協力のもと独自開発したゲームプログラムとされています。
宇宙という極限の環境下でミッションを遂行するために必要とされる、高度なチームワークを形成するテストであることから、徐々にビジネスの分野でも活用されるようになりました。ゲームの基本的な特徴は、次のとおりです。
- 対象人数:4~100名以上(各チーム4~6名推奨)
- 目安所要時間:50分~2時間
- 実施形態:集合研修、オンライン集合研修(Zoomなどのビデオ会議システム)
- 金額:5万円~
- 学べること:チームで考える重要性、合意形成を行うプロセス
各メンバーは月に不時着した宇宙飛行士という設定です。200マイル(約320km)離れた母船に戻るために、指定された15種類のアイテムを選択していくというのが基本的な仕組みです。15種のアイテムについては、それぞれ使い道などを明確にしたうえで、最終的に優先順位をつけることとなります。
ゲームの進め方としては、まず個人でアイテムの優先順位をつけ、それをもとにチーム内で話し合いを行います。意思決定については多数決や妥協に頼らず、なるべくチーム内での合意形成に基づいて行わなければなりません。
その後、複数のチームがいる場合は、グループごとに優先順位とその理由を発表し合います。NASAによる模範解答とアイテムの選択順位を照らし合わせて順位の差を求め、最も隔たりが小さいチームが優勝となります。
NASAゲームでは、チームで考えることで良いアイデアが得られることを確認したり、合意形成を行うプロセスを通じてチームワークを向上させたりする効果が期待できます。
バースデーライン
「バースデーライン」とは、その名のとおり誕生日の早い人から順に、1列に並ぶシンプルなゲームです。特別に用意するものはないため、手軽に取り入れられるのがメリットといえます。
- 対象人数:15~30名以上(各チーム5~10名推奨)
- 目安所要時間:10~15分
- 実施形態:集団研修
- 金額:0円
- 学べること:ノンバーバルコミュニケーションの重要性
このゲームでは、順番を決める際にジェスチャー以外のコミュニケーションが禁止されています。会話はもちろん、筆談も行えません。言外のやり取りで情報を伝達したりくみ取ったりする高度なコミュニケーション能力が求められます。
参加者は5~10名のチームに分かれ、円になって並びます。その後、5~10分間の制限時間内で、チームごとにジェスチャーで相談しながら誕生日順に整列します。制限時間になったら口頭で答え合わせをして、正しい順番で並べているかどうかを競い合うのが基本的な流れです。
このゲームでは、特に誕生日が近い相手との意思疎通が求められるため、自然と仲間意識が強まっていきます。また、全員がジェスチャーという限られた手段でコミュニケーションを図らなければならないため、上司と部下の関係を超えて平等に協力する力を育むことができる点もポイントです。
共通点探しゲーム
「共通点探しゲーム」とは、チームの全員に共通するものをできるだけ多く探っていくというシンプルなゲームです。
- 対象人数:10名以上(各チーム3~5名推奨)
- 目安所要時間:30分
- 実施形態:集合研修、オンライン集合研修(Zoomなどのビデオ会議システム)
- 金額:0円
- 得られる効果:親近感や一体感の醸成、関係性の構築
3~5名のチームを作り、それぞれがグループ内の全員に共通する特徴を話し合いで見つけていきます。共通点の具体例としては、趣味やお気に入りの楽曲、嫌いな食べ物などが挙げられます。
このゲームでは、普段なかなか知り得ないメンバーの意外な側面を知ったり、共通点の発見によって親近感が生まれたりする効果が期待できます。また、人間関係に課題がある場合も、好き嫌いというシンプルな感覚で語り合うことが関係性修復のきっかけとなるでしょう。
レゴ®シリアスプレイ®
レゴブロックを使ったチームビルディング研修「レゴ®シリアスプレイ®」は、レゴ社とマサチューセッツ工科大学の共同研究により開発されたメソッドで、ワークショップ形式で実践します。会社や組織の変革意識を強めたり、強力なコミュニケーション効果を生み出したりと、その効果の高さがビジネスの分野で広く注目を集めているのが特徴です。
ワークショップでは、ファシリテーター進行によってゲームを進めていきます。
- 対象人数:4~5名以上
- 目安所要時間:3時間~2日(課題により変動)
- 実施形態:集団研修
- 金額:20万円~
- 得られる効果:組織の変革意識の醸成、課題共有や相互理解の促進
基本的にはお題に合わせてレゴを選んだり組み立てたりして、順番に発表していくゲームですが、ファシリテーターの工夫によってさまざまな付加価値が生まれていきます。そのため、ファシリテーターの質が充実度を左右するポイントといえるでしょう。
このゲームでは、完成したブロック作品について意見交換することで、参加者同士の課題共有や相互理解が促進されます。また、戦略立案力を養うことにもつながるでしょう。
ライフ・スイッチ
「ライフ・スイッチ」とは、ワークとライフの両面から人生を疑似体験し、多様性やタイムマネジメントなどを学んでいくシミュレーション型ゲームです。株式会社ワークライフバランスが開発・販売を行っており、基本的な特徴は次のとおりです。
- 対象人数:30名程度(各チーム5~6名)
- 目安所要時間:3時間
- 実施形態:集団研修
- 金額:50万円
- 学べること:ワークライフバランスの構築、ダイバーシティや心理的安全性の重要性
このゲームはカードを中心とした専用キットを使用します。担当のコンサルタント(あるいは養成講座を受けたファシリテーター)が、テーブルごとにカードを配り、ゲームの目標や詳しいルールを説明していきます。
仕事とプライベートの双方のステージを考慮しながら時間を配分し、ワークとライフのより良いバランスを構築していくことがこのゲームのおもな狙いです。
ワークとライフにそれぞれ決まった時間をあてて、特定のターム数で個人のゴールと会社としてのゴールを達成していきます。
時間をどのように割り振るかによって、それぞれの人生はまったく異なる展開を迎えていくため、参加者それぞれが自身のワークライフバランスをじっくり見直す機会となります。
疑似体験を通じて、ダイバーシティや心理的安全性の重要性に対する理解を深め、働き方改革の取り組みにつなげていくことが、このゲームの重要なテーマです。
まとめ
チームビルディングゲームは、リラックスした状態で遊びながら相互理解を深め、チーム内の結束力を培っていくための研修ツールです。効果的に活用すれば、個性や年齢、立場が異なるメンバー同士の絆を深めたり、チームとしての強さと柔軟性の両方を鍛えたりできます。
チームビルディングゲームにはさまざまな種類があり、それぞれ導入に適した状況は異なります。自社の課題や今後の方向性を把握し、最適なゲームを選ぶことで、高い効果が期待できるでしょう。